悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ

いつも百合子と桔梗に言われるのだが、僕は、甘味を感じない……持たない男だそうだ。

だが、甘味は味わうものだ。
僕はいつも十二分に味わっている。

あの二人の言葉は間違っている。
おまけに竜崎まで……。

「スィートな遥香ちゃんを泣かしたら……」

ニッコリ笑うが……怖い!

「あの子はねっ、温室育ちのヒマワリなの。ゴミ男の穢れで汚したら……どんな手を使ってでも、貴方を潰す!」

この女はマフィアか何かか?

こいつの恐いところは、それが冗談に聞こえないところだ。
否、冗談にしないところだ。

「何をもって『汚す』と言っているのか分からないが、君に潰されるようなことはない」

断言できる。

「そう、なら……」と唇の端を少し上げたと思ったら、いきなり人差し指を僕の鼻先に突き付ける。

「って安心できる筈ないじゃない! この鈍感男! スウィーツも満足に味わえない男のくせに!」

男の……くせに、とまで言われてしまった――何故に?
――ああ、無情かな我が人生。

< 23 / 88 >

この作品をシェア

pagetop