悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
「恭吾さん、お夕飯はお済ですか?」
あの女、神崎が訊ねる。
「否、まだだ」
いつものように答える。
神崎は絶対無理強いしない。僕が「食べた」と言えば、さっさとそれを持って帰る。
「では、すぐご用意します。少々お待ち下さい」
満面の笑み浮かべ、簡易テーブルを組み立て、テーブルクロスを敷き、その上に料理を並べる。その手際のいいこと。まるで早送りを見ているようだ。
「ちょっと訊くが、君は僕に夢中なのか?」
神崎はポッと頬を赤らめ「はい」と大きく頷く。
――なるほど。
「では、僕は君に塩対応をしているか?」
「とんでもない!」と神崎は両手を顔の前で激しく振り、否定する。
「誰がそんな無責任発言をしたのですか!」
珍しい。怒っている?
「竜崎課長がそう言っていた。塩対応の意味は分からないが、君への態度がそうらしい」
「もう! 余計なことを!」と神崎はブチブチ口の中で文句を言いながら、僕に塗り箸を渡す。
毎度思うが、割り箸でないところが彼女らしい、とそれを受け取る。