悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
「全くそんなことありませんから」
神崎が力強く言う。
「美味しそうに食べる恭吾さんの姿がそれを物語っています」
「――? そうか、ならいい」
何がいいのか分からないが、神崎自身がそう言うのなら、いいか、と何故かホッとする。
「矢崎課長、今日も美味しそうですね」
ITシステム戦略課のニューフェイス君島がデスクから乗り出し、簡易テーブルを覗き込む。
「課長が食堂に行かない理由が分かります」
君島は新入社員だからか、考えなしの怖いもの知らず、と言われている。
「こんなに愛情込めた食事を、恋人から差し入れてもらえて、幸せ者ですね。嗚呼、僕も早く彼女が欲しいなぁ」
「君島!」
「君島さん!」
僕と神崎は同時に君島の名を呼ぶ。そして……。
「恋人ではない!」と同時に否定する。それから……。
「奥さんです!」と神崎だけが強く言い切る。
驚いたのは君島だけでなく、僕と……。
「奥さんだって!」
突然現れた声も! だった。