悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
それは今まで見たことのない、皮肉めいた作られた笑顔だった。
能天気な顔しか知らなかった僕は、自分でも驚きだが、小悪魔のようなその顔が新鮮で、ちょっとだけ彼女が魅力的に見えた。
――と言っても、僕はマゾではない。だから、良い奴より悪い奴が好き、ということではない。
だが、『悪い奴ほど良くモテる』と言った竜崎の言葉が、ちょっと分かったような気がする。
でも、単に悪い奴だけじゃダメだ。こんな風に、ギャップがあってこそ魅力的に映るのだ、とよ~く分かった。
「君に誤解されたくないからだよ」
デスクに寄り掛かり、どこぞのグラビア写真のようなポーズを取る赤城。
この男はこういう恥ずかしいことができるのだ、とフムフムと見ていると、神崎が言う。
「君島君、赤城課長はまだご存じじゃないみたいだから教えてあげて。私が社内で何と呼ばれているか」
「ラジャー」と君島は敬礼し、「帝のパパラッチであります」とキビキビ言い、付け加える。
「社長以下、重役連も神崎さんの情報に助けられているとのことです」