悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
「こうなったら、君を落とす! 覚悟して」
ヒューッと君島が口笛を吹く。
「赤城課長、カックイイです」
「君島君、黙らっしゃい!」
神崎がピシャリと言い放つ。
僕の目にはどう見ても神崎の方がカッコイイのだが……。
「何とおっしゃられても、私は矢崎課長……恭吾さんの嫁ですので、どうぞお引き取り下さい」
オイオイ、どさくさ紛れに、嘘はいけない。
「神崎君……」と口を開きかけた僕の唇に彼女の人差し指が触れる。
「二人の秘密にしておきたいのは分かりますが、今は緊急時であります。よって、私の軽口、お許し下さい」
そう言うと、たった今、僕の唇に触れた人差し指を自分の唇に持っていき、シーッと瞼を深く閉じ、一つ頷く。
「アァァァ! 今の……間接キスですよね! うわぁ、生間接キス、初めて見ました! 今後の参考にします」
興奮気味に君島が叫ぶと、それまで素知らぬ顔をしていたITシステム戦略課のメンバーも、興味津々にこちらを見る。