悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ

「――君は何故、そんなにしてまで僕に食事をさせたいのだ?」

たぶんだが、僕は一日の消費活動量が、一般の成人男性よりもはるかに少ないと思う。

動きが極端に少ないからだ。だから、最低のエネルギーさえ摂取していたら、生きていけると思う。

そうだ、今までそれで生きてきたのだから、これからもそれで生きていける!

「旦那様のお体を気遣うのは嫁の務めです。それに、今は若いのでいいですが、きっとそのうち支障が出てきます」

キッパリと言い切る神崎を思わず見つめる。
帝ニュースにもなった容姿の変化は……太ったからではなく、健康になったから?

否、だからと言って、おいそれと女の要求は飲めない。

「君……嫁にする件は断った筈だが」
「断られても、誠意を持って相手に臨めば、きっと道は開けます!」

仕事戦士ならパーフェクトな答えだ……。
――と感心している場合ではなかった。

「否、開けない! 僕は結婚する気がない。一生、誰とも」
「どうして、そう頑ななのですか? 過去に何かあったとか?」

過去……? 何かあったのだろうか……。

頭の奥底にある、過去のマイナスを収める棚。そこに並ぶ鍵の掛かった箱。その一つが開きかけ、慌てて抑える。

「否……何もない」

神崎が訝しげに僕を見る。

「……とにかくです! 私は恭吾さんと結婚します! じゃないと……嫁にしないと……」

キッと僕を睨み不貞腐れたように言う。

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