悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ

週明けの月曜日、あの女が大きなマスクをして現れた。

「恭吾さ~ん、お会いしとうございましたぁ」

マスクで半分以上顔が隠れているが、少し痩せた? そんな風に見えた。
流石の僕も病み上がりの人間に向かって、リアルに鬼畜な態度は取らない。

「風邪だと聞いたが、もういいのか?」
「恭吾さん!」

両の手を組み、祈りのポーズを取ると、ポロポロ涙を零し始める。

「心配して下さったのですか? 私、すごく嬉しいです!」

聞けば、あの『嫁にしないと泣いちゃうぞ』の次の日から、どうも喉がイガイガしていたらしい。

だから、結局のところ、僕が避けるまでもなく、彼女の方が僕に風邪を移さないように避けていた、ということが判明した。

どうりで! 全然会わなかった筈だ、と妙に納得する。
その様子を見ていた外野が、アレコレ噂していたようだ。

赤城もその機に乗じ、神崎を落とそうと目論んだらしいが、神崎の方はどんどん悪化する体調に、それどころではなかったようだ。

本当に、事実は小説より奇なりだ。

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