悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ

竜崎はメドゥーサと呼ばれるほど怖い女だが、皆が言うには美人らしい。
何故、断定的な言い方を避け、『らしい』と婉曲(えんきょく)を表す助動詞を使うのか――。

それは――僕の周りには、美人と評判の母や妹、親戚がゴロゴロいる。だから、それと同等の竜崎も、また美人なのだろうが、僕には美人の基準がいまいち分からないからだ。

僕から言えば、どの女も、女性という男性とは違う性なだけだ。

あっ、でも、あの時のあの女は……ゴマちゃんだった。
性を超えた……女性アザラシ?
――と何となく新たな発見を感慨深く思っていたら、怒鳴られた。

「本当、仕事馬鹿! この間の会議、覚えていないの!」

会議……と考え、ハタと思い出す。
そう言えば、親会社であるKOGO創立七十周年記念式典……。

「白鳥佑都の婚約披露!」

彼が残る一人、広報宣伝課の課長だ。
まだ公になっていないが、彼は、KOGO前総帥イーサン・ミラー氏の孫で、KOGOの次期後継者でもある。

「思い出してくれてありがとう。お相手は大野木楓ちゃんだからね! 忘れちゃダメよ」

思いっ切り、嫌みったらしく言われる。
それぐらい僕も覚えている。

それにしても……大野木楓は白鳥のアシスタントだが、あの二人、いつの間にそんな仲になっていたのだろう? 全く気付かなかった。

< 5 / 88 >

この作品をシェア

pagetop