悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
外堀を固められ、結局、帰宅することになった。
「送ります!」
「結構だ!」
申し出をキッパリ断ると、女は渋々承知し、タクシーの運転手に何か耳打ちする。
「了解!」と気の良さそうな年配の運転手は返事をし、サイドブレーキを下ろし、アクセルを踏む。
動き出した車の中で、運転手が言う。
「家に送り届けたら、心配だから確認の意味で『着いたよコール』をしてくれって、いい奥さんですね」
「……」全くの赤の他人にまで……。
もう反論する元気もない。
グッタリとシートに身を落とすと、途端に力が抜け、目が塞がる。
気が付いたら、驚くことに自宅のベッドの中だった。
僕は瞬間移動もできるようになったのか、と地味に驚く。
そして、何故だろう?
目前にドラえもんの『どこでもドア』が見える。
開けた途端、極寒の北極で北極クマにプロポーズされ、サハラ砂漠でラクダにプロポーズされ……。
「ちょっと、お兄様、大丈夫!」
ブラックホールに落ちたら、ゴマちゃんにプロポーズされた。
「物凄く、うなされていましたわよ」
ボンヤリとした視界が、次第にクリアになってくる……百合子? 夢? 妙にリアルだった。