悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ

結局、あの後、タクシーの中で熱はグングン上がり、フラフラになった僕を、母と共に自室に運んでくれたのは、あの人の良さそうな運転手だった。

瞬間移動したのではなかったようだ。残念だ。

「質の悪い風邪が流行っているみたい」

往診に訪れたかかり付けの医者が言っていたらしい。
「私、叱られちゃったのよ」と母が頬をプーッと膨らませる。

「痩せ過ぎだって! 貴方の不摂生を私の責任にされたのよ! どうしてくれるのよ!」

病み上がりだというのに、母はケンケンと吠え、挙句、「責任を取って、お婿にでも行って、この家から出て行って頂戴」と命令される。

夢と現を行ったり来たりしている間に、百合子に連れられ、あの女が見舞いに来たという。どうやら、ゴマちゃんのプロポーズは現実だったようだ。

だが……婿? いったいどんな話になっているのだ? 聞くのが恐ろしいので黙っておく。

「これ、遥香ちゃんからお見舞い。本当にいいお嫁さんだこと」

また一人、あの女に毒されたようだ。
しかし、差し出されたプリンは極上に美味だった。

久々の甘味に身体の細胞がようやく目覚め、箱にあった八個のプリンを完食すると僕は完全復帰した。

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