悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
「恭吾さん、完治、おめでとうございます!」
キーボードを軽快に叩いていると、女の声が聞こえた。
「ありがとう」と顔を上げず礼を述べる。
「無理しないで下さいね」と女がデスクの片隅にケーキボックスを置く。
いつもの光景だ。
それに何故か安堵する。
「あらぁ、元サヤ?」
「あっ、僕もご相伴預かります!」
竜崎と君島も相変わらずだ。
こっちは、かなりウザい。
「元サヤ? 何のことですか? 私と恭吾さんはずっと鬼ごっこ状態。絶賛片思い中です」
何故、胸を張り、威張って言う?
だが、この女……自覚しているではないか!
何が流石なのか分からないが、流石だ!
「本当、矢崎課長も往生際が悪いんだから。君島君もそう思うでしょう!」
メドゥーサの眼が奴を見る。
「ハッハイ! その通りであります!」
ピキンと固まり、軍隊並みの敬礼をする。
「――だからですね、私も、会えない時間、いろいろ考えてですね……」
女が愁傷な顔で言う。
これは……諦めたのか……?
何となく、複雑な気持ちで次の言葉を待っていると……思いも掛けない言葉が女の口から出る。