悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
「嫁になれないのなら、愛人っていう手もあるかな、と思いまして」
思うな!
「やだ、遥香ちゃんはそれで満足なの? 一般に言われる愛人って、正妻さんの次、二番目ってことじゃない?」
女はウーンと天井を見上げ、いきなり項垂れる。
「――違います! 恭吾さんの一番は仕事、三番です。ダメです。我慢できそうもありません」
そして、僕を見つめ、深々と頭を下げる。
「申し訳ございません。私、愛人にはなれそうもありません」
その言葉に、たまたま側を通りかかった赤城がギョッと目を剥く。
「愛人ってなんですか! 矢崎課長、貴方って人は! 神崎さん、こんな奴、追い掛けるのも無駄です!」
一連の流れを知らない赤城だから、さもあらん……のだが、この状況は……ヤバいのではないか?
「あっ、誤解です!」と女が慌てて否定するが、赤城の興奮は収まるどころか、どんどんエスカレートする。
君島と竜崎に助けを求めようと視線を向けるが……。
「あっ、僕、急ぎの仕事があったんだ」
「そうだった、榊部長~」
二人は急に仕事モードになり、そそくさと立ち去ってしまった。