悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
「それでですね」
少しもメゲていない女は、竜崎と君島にニコニコ顔で提案する。
「チャールズ・ディケンズのクリスマス・キャロルに出てくる、三人の精霊になりませんか?」
手に持つ本を開く。
「過去、現在、未来の精ね」
挿し絵の描かれたページを覗き込みながら、竜崎が「それにしても用意がいいわね」と感心する。
「この本は愛読書の一つです。持ち歩いています」
明るく答える女に、またもや赤城が口を出す。
「では、私はスクルージになるとしよう」
一瞬の沈黙の後、「じゃあ、誰が過去します」と君島が話し出す。
あまりの塩対応に、ちょっとだけ赤城が気の毒になる。
結局、話題が逸れ、エスコート云々は何処か彼方に消え去った。
ホッとしながらも、ドレスコードに頭を悩ます。
クリスマス……そんなタオル、家にあっただろうか?
今回も、百合子の知恵を拝借しよう、と何日か振りに自宅に戻る。
「タオルはありませんが、これをお貸しします」
百合子に渡されたのは……着ぐるみ?
モロ、トナカイだった。