悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ

このすっ呆けた女が……女性アザラシが……我が社の総務で主任?

いやはや、人事も思い切ったことをしたものだ。
半ば呆れ気味に感心していると、女がまたも言葉を発する。

「改めまして、私、神崎遥香と申します。年は二十七歳。妹君の百合子さんとはお友達です」

百合子と友達……それは気の毒に。

それにしても、二十七歳とは……女の年齢は分からぬものだ。
成人式の晴れ着だと思っていたが、遠い昔に終わっていたのだな、と視線を女の顔に落とすと、女が笑みを浮かべた。

フム、やっぱりアザラシの子、ゴマちゃんだ。

「ですので、私と結婚して下さい」

何故、『百合子の友達』の次にその言葉が出てくるのだ?

「申し訳ないが、百合子の友達と結婚する気はない」

女は少し考え、またニッコリ笑む。

「では、友達を止めて、義姉になります」
「……」

どうも何を言っても通じないようだ。

ここは退散した方がいいか、と「失礼する」と足を一歩踏み出すが、ん? 何かに引っ張られる。

「私、好きなんです! 一目惚れなんです!」

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