きっと今夜は雨・・・
 家にいて電話を待つ気にはない。

 外出していれば、他のことに気が向くし、携帯も家に置いて行こう。

 時計を見ると9時を指していた。

 都内に出れば、遊ぶ場所もあるし時間つぶしにもなる。

 そう考えて、朝食を済ませて、外出の準備をした。



 外に出ると、空は厚い雲に覆われている。

 やはり、傘を持っていったほうがいいだろうか。

 部屋に引き返そうとしたところで、後ろから声を掛けられた。

 そこに立っていたのは意外な人だった。

「あなたは・・・」

 目の前にいるのは、社長の娘だった。

 外で立ち話もできないし、まだお店も開いていないので、仕方なしに部屋へと上げた。

「どうぞ」
 
 グラスに注いだ麦茶をソファに座る彼女へと差し出した。

「ありがとう。外出の予定があったのでしょう?私も他に用事があるので、手短にすませますね」

 どうやって、ここを知ったのだろう。

 そして、ここに来た目的とは何なのか。

 混乱した頭のまま、彼女の向かい側へと座った。

「休みの日にごめんなさいね。でも、こうしないとあなたにお会いすることはできないと思ったから」

「話は、私と清水大介さんに関することですか?」

「お話が早くて、助かるわ。清水さんの身辺を調べていたら、あなたの存在が出て来たの。彼はあなたの存在をずっと隠していたみたいだけれどね。あまりにガードが固いから、おかしいと思っていたけれど。だって、酔った勢いを利用して抱きついても、出張についていって同じ部屋に泊まっても、手も出してこないのよ。それって悔しいじゃない!」
< 12 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop