きっと今夜は雨・・・
 ドンと彼女がテーブルを叩いた。

 その振動でテーブルのグラスが少し浮き上がった。

「それで、私にどうして欲しいと」

「あなたの存在が邪魔なのよ。あなたというストッパーが彼の行動の邪魔をしているのよ。どうすればいいかなんて、言わなくてもわかるはずじゃない?」

 彼女は本気だ。

 彼が自分に落ちないことに腹を立てているのがわかる。

 でも、ここで引くわけにはいかない。

 彼女の考えにつられて、答えを出すことは駄目だ。

「お気持ちはわかりました。ただ、どうするかは自分で考えます。あなたの思い通りには私は動きませんから」


「面白いわね。さすがに一筋縄ではいかないのね。でも下手な行動を取ると、あなた、会社にいられなくなるわよ?」

「私たちのことは当人同士で話をして、決めますから。もうそろそろ外出しなければならないので、お帰りいただけますか?」

「そうね。今日のところは帰るわ。少し時間をあげる。そうね、1週間もあれば、足りるかしら?あなたが身を引かなくても、私が彼を落とせばいいんですものね」

 彼女は立ち上がり、部屋を出ていった。

 カランとグラスの氷が解けて動く音が部屋に響いた。



 突然、電話のベルが鳴った。

「もしもし」

「俺だけど、昨夜は電話できなくて、ごめん。真夜中に留守電入れておいたんだけれど」

「ごめん。まだ聞いていなかったわ。これから出かけなければ、いけないから、切るね」

「そうか、わかった。いつだったら、会えそう?」

「いろいろあって今日明日も駄目なの。また、来週末にでも電話かけてくれる?」

「じゃあ、来週の金曜日の夜に必ず、かけるから」

「それじゃあ」

 電話を切った。

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