きっと今夜は雨・・・
「遅れてごめん」

「そんなことないよ。私が早めに来ただけだから」

「そうか。えーと、アイスコーヒー」

 彼はオーダーを取りに来たウエイトレスに注文を頼んだ。

「最近、何だか俺たちってすれ違ってばかりだよな」

「部署も違うし、忙しいのはいいことじゃない?」
「そうじゃなくてさ・・・」

 口ごもる彼の背景に彼女の存在が見え隠れする。

「私たち、別れよう」

「え?」

 それが私が出した答え。

 彼女のことを抜きにしても、自分の気持ちが彼に向いていないことがわかってしまったから。

「おまたせしました」

 アイスコーヒーを持ってきたウエイトレスが、すばやくテーブルにおいていそいそと去っていった。

 少しの間二人の間に沈黙の時間が流れた。

「もしかして、会社で流れている噂が原因なのか?だったら、それは・・・・」

「事実じゃないといいきれないよね。それにそれだけじゃないから理由は。あなたも気づいているはずよ。お互いがちゃんと向き合ってなかったことに」

「確かにそうだね。俺も仕事は大事だし、もちろんデートのキャンセルなんかも数多くあるよね。でも、俺が好きなのは・・・」

「事実がどうであれ、あなたのことを信じられなくなっているから。このままいても、多分、駄目になる」

「もう、君が決めたことなんだな?わかった」

「ごめんなさい」

「俺のほうこそ、ごめんなのかな?」

「それじゃ、さよなら」
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