きっと今夜は雨・・・
「どうする?ロビーで待っていてもらってもいいんだけれど」

「一緒にいくよ」

 もし、ロビーで待っていて、誰かにあっても嫌だし。

 エレベーターが上の階から下りてきている。

 チン!と音がして、扉が開いた。

「おつかれさまです」

 社長が下りてきていた。

 そして、その後ろには。

「どうした?二人とも残業かな?」
「いえ、忘れ物を取りにきたんです」

「そうか。では、失礼」

 私の視線はずっと、社長ではなくその後ろにいた彼に向けられていた。

 でも、彼はこちらに一度も目を向けなかった。

「行きましょう」

 彼女に促されてエレベーターに乗り込んだ。

「パパー」

 閉まりかける扉の開くボタンを慌てて押した。

 二人してそのままロビーに降り立つ。

「どうしたんだい?由美子」

「清水さんを迎えに来たの。明日から出張で会えないじゃない。だから食事でもって思って」

「由美子、わがまま言っちゃいけないよ。彼には明日の準備があるんだから」

「いいんですよ、社長。僕はかまいません」

「悪いね」

 三人で連れ立って出て行く姿を黙って見送る。

「・・・忘れ物、取りにいかなくちゃね」
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