きっと今夜は雨・・・
 1階で止まっているエレベーターを開ける。

 乗り込んでも二人は黙ったままだった。

 忘れ物をとり、再びエレベーターで1階を目指した。

「ごめんね。もし、一緒に来なかったら、見なかったはずなのに。気分転換が駄目になっちゃったね」
「ううん、そんなことない。こんなことがないと、自分の目で確認しないと信じられないことってあるから」

 耳で聞いたことよりも、実際に目で見たことが真実であること場合もあるから。

「このまま、飲み会に戻れる?」

「うん、戻るよ。1人でいるともっと余計なことを考えそうだから。少しでもそういう時間が少ないほうがいい」

「わかったわ」

 そのあと、いくら飲んでも、やはり酔うことはできなかった。



「う~ん」

 厚手のカーテンの隙間から光が射していた。

「朝なんだ・・・」

 昨夜は帰ってきて、着替えもせずにそのままベッドに倒れこんだことは覚えている。

 起き上がると、自宅電話の留守電のランプが点滅しているのに気が付いた。

 ランプを押す。

『伝言は2件です』

 伝言再生のボタンを押した。

『もしもし、私だけれど、ちゃんと家に帰れた?何かの時には力になるから、いつでも頼ってね』

 同僚の彼女からだった。

 帰りのタクシーで彼女を先に下ろしたので、その後を心配してくれたのだろう。

 あとで彼女の携帯に連絡をしておこう。

 次の伝言を聞く。
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