きっと今夜は雨・・・
 なるべく気にしないようにしていたが、それでもいろんな噂話が入ってくる。

 今朝聞いた噂はこうだった。

『その後の社長の娘と清水さんがどうなったか、知ってる?』

『先週も一緒に食事していたみたいよ』

『システム部の知り合いにそれとなく聞いてみたんだけれど、社長の娘はその気になっているみたいだけれど、清水さんの方はそんなんでもないみたい』

『そうなんだ。でも、うまくいかないとどこかに左遷とかにならないかね』

『その前に動かぬ証拠とか作りそうだけれどね、彼女の場合』

『案外そうかも』

 確かにこの前のは社長の手前、断ることができなかったという可能性のほうが高いかもしれない。

 見た感じでは一方的に押し切られている感じはする。

 でも、私は彼女ほどのパワーが自分にないことはわかっている。



 今日は金曜日。

 今週ほど、1週間を長く感じた週は今までなかった。

 答えはまだ出ていない。

 だから、本当はまだ、会うべきではないのかもしれない。

 昼休み、外に出ていた私はロビーで、上から下りてくるエレベーターを待っていた。

 扉が開いて乗り込み、閉まるのボタンを押した。

 扉の隙間に体を滑り込ませて、滑り込んだ人がいた。

「あっ」

 会いたくないときほど、会ってしまうのが、やはり運命のいたずらなのだろうか。

 彼だった。
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