インタビューはくちづけの後で
明かりの消えた児童館の前でふたりで車を降りる。

「俺の家にはマンガがなくってさ。
小学校の高学年になってひとりで電車に乗れるようになったら、親に内緒でここにマンガを読みに来てた。
唯一のくつろぎの時間ってやつだ。
それで小学校に入ったばっかりの芽衣に会った。」

「芽衣は積み木や人形遊びが好きで、マンガを読んで動かない俺を引っ張って相手をさせてた。
最初は迷惑って思ったけど、遊んでみると、結構面白い。
芽衣の積み木のセンスは独創的だったし、
描く絵はキレイな色使いだった。
人形遊びは芽衣の家庭の様子が垣間見えた。
仲の良い家族。一緒に囲む食卓。母親のお小言。
どれも俺にはないものだったよ。
夕方芽衣を何度か送って家にも行った。
芽衣のお母さんはおっとり優しくて、俺を家にあげて、ジュースを飲ませてくれたりした。
芽衣の家庭に幸せの形をみたよ。
羨ましいと思った。
でも、俺は中学になったら勉強が忙しくなって足が遠のき、
高校は留学したからそれきり児童館には行かなくなった。」

「でも、6年前、帰国した時に児童館がなくなるって話を聞いて、
急にいろんなことを思い出したんだ。
懐かしくなって児童館に行ってみたら、
芽衣はボランティアになって子どもと遊んでた。
本を読み聞かせ、一緒に遊び、楽しそうに笑ってた。
俺は大切な笑顔にまた、会えたって思った。
オヤジに児童館を助けるように説得して、継続的に援助させた。」

この児童館に『レインボートイ』のオモチャがたくさんあったのはそのためか…
本も大きな遊具も充実しているし…


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