インタビューはくちづけの後で
マル秘の資料をつまみ上げてみている男。

「かっ、返してください!それってマル秘って書いてあるで…しょう?
え?…副社長?!え?」

「まだ、副社長じゃねーよ。
ふーん。確かに、これじゃ何にもわかんねーな。」

後ろに立っている男を見上げる。

背は高く180センチはあるかな?
仕立ての良いダークブルーのスーツがよく似合う。広い肩に長い手足。

写真ってそんなに修正してないかも…

日本人離れした彫りの深い端正な男らしい顔立ちに短く整えられた癖のある黒髪。
特に切れ長のクッキリ二重の目ヂカラ半端ない…

でも…その笑顔は
写真ほど爽やかってわけじゃないかな…

クッと上がった口元は一筋縄ではいかない予感がひしひしと…

私が口を開けて見上げていると、


「おい、広報部新人、小柳 芽衣(こやなぎ めい)、特別に密着取材させてやろう。」

「よ、よく私の名前をご存知で…」

「さっき、圭介(けいすけ)が、社内報の記事の担当だと言ってた」

「斎藤って言わないとわかんないだろ、瑞希。」と斎藤課長が副社長の後ろから顔を出して

「密着ってお前ねえ。」と渋い顔をしている。

「別にいいだろ。新人なんて広報部でも役に立ってないし。」


…断言しないでください。副社長…

って言うか密着?

テレビでよくみるような、朝から夜まで付いて歩くって事?


「決まり。行くぞ。小柳。」とファイルを課長にポンと手渡し、副社長は部屋を出て、ドアのところで

「早く来い。」と私を振り返る。

「へ?」

「行ってらっしゃい。明日の祝日は大事なイベントだから、出社したら予定通りイベントを手伝って。
瑞希、あんまり連れ回すなよ。」と斎藤課長が深いため息を付いて私に手を振る。

「は、はい!」と私は慌てて副社長を追った。



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