インタビューはくちづけの後で
昼休み。
同じチームの3歳上のユリさんが(よく出来の美人。気も強いけど、女らしい心づかいもある憧れの先輩だ。)
一緒に食堂で定食を食べながら、

「昨日、ジュニアを見たわ。小柳さんと一緒にいるところ。」とニコニコと言われ、思わず、箸が止まる。

見られていたのか…イベント会場で…

混んでいた会場だったし、まだ、副社長は就任前だし、誰にも気づかれないかって勝手に思ってた…

「小柳さん、困った顔、可愛いわ。ジュニアでなくてもつい、からかいたくなる…」とふふッと笑う。

え?
…私と副社長の関係を知っている?


「そんな顔しないで。広報部はあなたがジュニアの許婚ってみんな知ってるわ。」

「ど、どうして?」私だって3日前に聞いたばかりなのに…


「んー。新入社員の歓迎会の時。あなたは酔って寝ちゃったけど…
花形で精鋭揃いの広報部に新人の女の子は異例だったから、酔って部長に問い詰めた人がいたのよ。
斎藤さんの下っていうのも納得がいかなかったしねえ。
斎藤さんって最初は営業にいたの。
その時に学生だったジュニアと組んでイギリスの子供用の知育カードゲームと
アメリカのアメコミ紙のキャラクターの忍者のヒーローもの。『ニンジャーマン』の逆輸入を成功させた。
ジュニアが売れるものを提案して、交渉は斎藤さん。
いいコンビね。
その2つはヒット商品になって斎藤さんは昇進し、希望の部署に異動になったし、
ジュニアも入社してすぐに副社長に就任することに決まったと言ってたかな。
斎藤さんって社長の身内だけど、切れ者だし、いずれは役員になる人だから、
傷を付けずに出世させるために、
斎藤さんの部下はさらに選ばれた人達しかいないはずだった。
それで、まあ、部長が口を滑らせた。って言うか、言わざるおえなかったのよ。」

「な…なんて?」

「ジュニアの許婚。みんなキチンと面倒を見ろって。」

はあー。思い切り、分不相応な人事って訳だ。


「初めは適当に仕事を振ったりして、あなたが根をあげるのを待ってた人もいたと思う。
でもねー、あなたは思いのほか根性があって、食いついて来た。
いつも可愛い笑顔で、楽しそうに新商品に触ったりして、頑張って仕事に向き合ってた。
なんだ、私達と同じようにオモチャが本当に好きなんだって、
だからね。結構ほだされて来ちゃったのよねえ。
この子はきちんと鍛えればモノになるって…」と私の顔を見た。

< 37 / 51 >

この作品をシェア

pagetop