インタビューはくちづけの後で
再び、密着です。
週末。
私は瑞希さんのマンションの前にいた。

午後3時。
チャイムを鳴らしても留守のようだ。


今日は会って話を聞くまで帰らないと決めてる。

幸い、1階のカフェは営業中だ。

小さなカウンターだけの喫茶店だ。

少し、年が上の清潔そうな笑顔の女性がキッチンの前のカウンターの中で微笑んでいる。

窓に向かったカウンターの端っこに座り、水を運んできた女性にブレンドコーヒーをたのんだ。

綺麗な人だ。
左の目の下の2つ並んだホクロがとても色っぽい。
仕立ての良いゆったりとした水色のシャツと黒いパンツにグレーのエプロンをつけて
ブレンドコーヒーを運んできてくれた。


「クッキーもいかがですか。
今朝、焼いてみたんです。まだ、お店に出せるレベルではないので、サービスです。」と微笑んでくれたので、

「ありがとうございます。」と言って受け取ると、

「アイスボックスクッキーっていうらしいです。」と言って、また、キッチンの中に戻って行った。

少しいびつな市松模様と渦巻き模様のクッキーだ。
かじってみるとサクッとバターの香りが広がった。

「美味しいです。」と振り向いて微笑むと、

「笑ってくれてよかったです。なんだか寂しそうな顔に見えたので…」とそのまま奥に入ってしまった。


ひとりになってゆっくり香りの良いコーヒーを飲む。

ジャズが低く流れている。音がやっと耳に入ってきたみたいだ。

かなり思いつめて、緊張していたみたいだ。

きっと、店主は私をひとりにしてくれたんだな。

と窓の外を眺め、瑞希さんが帰るのを落ち着いた気持ちで待った。

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