インタビューはくちづけの後で
「じゃ、オヤジに挨拶は済んだから、外に出よう」と社長はまた、私の手を引く。

「副社長室の整理をするんじゃないんですか?」

「明日からでいいかな。まだ入社まで時間があるし…出かけるぞ。」

「…仕事が…」

「今の芽衣の仕事は俺の密着取材だろ。」と私の瞳を覗く。

「…はい。」と私はシブシブ頷いて、副社長の言葉に従った。

なぜ、また手を掴んでいるの?!


エレベーターのなかで、スーツ姿で手をにぎり合う男女。

絶対変だ。

私は床の模様を睨んでみる。

副社長はまだ社員じゃなくても、
私はここの社員だ。

エレベーターの中で乗り込んで来た社員達に
好奇の目でジロジロ見られている気が思い切りしながら、俯いて下まで降りると、

車寄せに黒塗りの車が停められていて、
「瑞希さんの運転手の高木です。」
とスーツ姿の40代くらいの男性が私に後部座席のドアを開けてくれた。
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