インタビューはくちづけの後で
副社長は車が動き出すと、

「ちょっと早いけど、食事に行こうか?」

と言葉は疑問形だけど、運転手さんに店の指示を出しているみたいだ。

勝手な人だ。

でも、私はこの人に聞くことがある。

『レインボートイ』は私を雇うつもりではなかったのだろうか?

なぜ、副社長も社長も私を名前でよぶんだろう?…と思って窓の外を見る。



そういえば、広報部に寄って来なかった。

みんな忙しく働いているだろう。

出来ないなりに頑張ってきたつもりだけど…

もしかしたら、私は必要ない人材って事だったのかな?

私は何をしているのかってため息が出る。

財布もスマホも持っていない。流れる景色を見ながらやっと思い出す。


「…荷物忘れてきました…」とポツンと言うと、

「うん?後で家に届けさせるよ。」となんでもないことのように口の端を上げて笑っている。

このまま会社に帰らないって事だ。


副社長、この状況って楽しいですか?


私は何もわからなくってちっとも楽しくありません。

と心の中で呟いた。
< 9 / 51 >

この作品をシェア

pagetop