あなたは誰にバツを与えたいですか?
 あたしはあくびをかみ殺した。

 知らないアドレスに返信をしてみたが、エラーが出て戻ってきてしまった。

 あたしは晴美を見た。

 晴美は浩介達のことを知っているから、知らないアドレスを使う必要はない。

 だから、彼女以外の誰かだ。

 だが、なぜこういうことをするのか分からない。

 他の誰かなのだろうか。

 おかげで昨日はほとんど眠れなかった。

「どうかした?」

 あたしは聞き覚えのある声に我に返る。

 浩介が不思議そうにあたしの顔を覗きこんでいた。

「なんでもない」

「今日、時間ある? 俺の家、珍しく誰もいないんだ。だから、遊びに来ない?」

 彼の口元がにやついた。

 あたしは昨日のやりとりを思い出していた。
 要はそういうことなのだろう。

 昨日、あのメールさえ届かなければ、二つ返事で頷いただろう。
 だが、あたしは首を横に振った。

「ごめん、今日、用事があるの」
「一時間くらいでも?」

 あたしは頷いた。

「そっか。仕方ないな」

 浩介は不機嫌そうな顔になりながら、ため息をついた。
< 12 / 37 >

この作品をシェア

pagetop