あなたは誰にバツを与えたいですか?
 何もなくホームルームが終わりをつげた。

 美由があたしの机までやってきた。

「どうかした? 元気ないね」

 妙にはしゃぐような声に違和感を覚えつつ、問いかけた。

「何で先生、浩介の名前を呼ばなかったんだろう」

 あたしの問いかけにあたりがしんと静まり返った。

 そんなあたしを美由がそっと抱き寄せた。

「大丈夫? 保健室に行く?」

「平気。少し疲れているけど、別のそれほどじゃ」

「無理しなくていいよ。ずっとつらかったんだよね」

 辛いことは辛い。だが、ずっととは少し違った。少なくとも晴美にあの写真を見せられてからだ。

「平気だよ。でも、どうして」

 あたしはそこで違和感に気付いた。

 浩介のことばかり考えていたが、名前を呼ばれなかったのは浩介だけではなかった。

 あたしに写真を見せてくれた晴美ともう一人いた。あのサイトを教えてくれた人。

「浩介君は一月前に事故に巻き込まれてなくなったから」

 どくんとあたしの心臓が鳴った。思わず携帯を取りだすが、昨日浩介にかけた電話の履歴もなかった。それどころかここ一か月の履歴がすっぽりと消えていた。代わりに美由から毎日のように他愛ないメールが届いていた。
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