あなたは誰にバツを与えたいですか?
主犯と傍観者
 靴箱を開けてから、全身から血の気が引くのが分かった。昨日、上履きを持って帰ればよかったとため息を吐くが、すでに遅かった。

 わたしは深呼吸をして、気持ちを整えた。そして、靴箱をあけると、ゴミの中から自分の上履きを探し当て、引き抜いた。そのとき、丸められた紙が一緒に地面に落ちた。

 紙を拾おうとしたとき、影が伸びてきた。わたしは彼女たちの顔を見て、思わず目を逸らした。彼女たちはそそくさと靴を履き替え、校舎に姿を消した。わたしはそっと唇を噛むと、紙を拾い靴箱の中に押し込んだ。彼女たちは二週間前まで友人だったはずのクラスメイトだった。

 鞄の中にコンビニで買いものをしたときにもらったビニール袋が入っているのに気付き、そこに靴を入れた。衛生的ではないが、ここまでくると文句を言ってもいられない気がした。

 二階にある教室の前に来た時、深呼吸をした。教室の扉を開けると、室内が一気に静まり返った。そして、再び教室が活気を取り戻した。前から三番目の席に座ると、ふっと天井を仰いだ。


「ねえ、なんか臭くない?」

 後ろの席から、くすくすと笑いをかみ殺したような声が聞こえてきた。
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