あなたは誰にバツを与えたいですか?
 振り向かなくても誰が言ったのかはすぐにわかる。声の主は坂口愛美。こんなことになるまではよく話をしていた子だった。他にも笑い声がいくつか混ざるが、誰の声なのかは全く意識したくなかった。

「変なのが教室に入ってきたからだよ」

 そう答えたのは水原春江だ。

「休めばよかったのに」

 愛美の言葉に、くすくすとした笑い声が起こった。

 今日でちょうど十三日目だ。これが今のわたしの日常だ。理由というのは全く分からなかった。ただ、水曜日に学校に行ったら、こうなっていたのだ。火曜日まで微笑んでくれていた友達が、そうでなくなった。

 チャイムが鳴り響き、先生が入ってきた。先生が生徒の名前を読み上げていき、返事をしていく。わたしの名前も当然呼ばれ、返事をした。

 このあからさまないじめは先生がいる間は行われない。
 だからこそ、靴箱にまで手を出されたのは、予想外だった。

 出欠確認が終わり、先生が話をする。
 そして、ホームルームが終わり、先生はそのまま教室を出て行った。

 わたしの唯一の安息時間が終わりをつげた。


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