あなたは誰にバツを与えたいですか?
「やばっ。今日、英語当たるんだ。予習してきた?」
「まじで? 忘れてた」

 わたし自身は割と成績がいいほうだ。いつもテストはクラスで五番以内に入っている。そういう意味では目立つほうなのかもしれないが、クラスでトップを取ったことはないため、あくまでほうでしかない。

「えー、田元さんに借りようかな」
「田元さん休み。風邪らしいよ。坂上君は貸してくれなさそうだよね」

 二人が何かひそひそ話をしていた。
 わたしが英語のテキストとノートを取りだしたとき、ノートがひょいと持ち上げられた。
 思わず顔をあげると、愛美がこちらを見て微笑んだ。

「あの、ノート」
「ノートが落ちてた。今のうちにうつそう」
「ラッキー」

 二人は嬉々とした表情でわたしのノートのページをめくる。そこで自分が当たりそうな部分の訳だけを移していた。


 わたしは前を向き、ため息を吐いた。
 しばらくたって、わたしの机の上にノートが無造作に投げられた。
 そのまま愛美は自分の席に戻った。

 勉強は得意だが、運動は得意ではない。美術は割と成績がいい。クラスメイトが普通だった火曜日に何があったのか全く見当がつかなかった。

 ネットで何か書きこまれて広がったのかのかもしれないが、少なくともわたしが入っているクラスのグループはいじめの片りんさえ感じさせない。

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