あなたは誰にバツを与えたいですか?
 もっとも他にも友人同士のグループはあるだろうし、どこかで広まったのかもしれない。一日でというのが実に不可解けど。



 わたしはお弁当を食べ終わると、天を仰いだ。どこからか友人同士ではしゃぐ人たちの声が聞こえてきた。

 昼休みはもっぱら外で食べる。外にいるとめったに嫌がらせはされないためだ。
 ねちねちとした陰口を聞かなくていいため、気が楽でもあった。

 学校に来たくないと思うことはあるが、これくらいで休んでいいのかという気持ちもあった。突然、前みたいな日常が戻ってくるのではないかという期待がゼロではないといえば嘘になる。

 今までみたいに接することが出来なくても、平穏な時間を過ごせればそれでよかった。

 生徒たちが校舎の中に戻っていくのが見えた。時計を確認すると、次の授業の開始前五分。そろそろ教室に戻ったほうがいい。

 靴を履き替え、自分の教室に戻ることにした。だが、ドアに手をかけても、扉が張り付いたように動かない。

 わたしは眉根を寄せ、教室内を覗きこもうとしたが、曇りガラスのせいでよく見えない。
 教室から締め出されたのだろうかという考えが浮かぶが、自分で否定した。

 そんなことをしたら間違いなく次の家庭科を受け持つ保坂先生にばれるし、そもそも先生自体が教室内に入ってこれないはずだ。
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