十五の行方
「あーもー分かんないー!」

「いいか早まるな、よく考えろ、部分点取れよ!?」


本当に心配になる彼女との補講は、大抵二人きりだった。


朝八時、先生はプリントをたくさん置いてさっさと職員室に帰ってしまう。


多分、ものすごく暑い教室にいたくないんだろう。


一枚解き終わるごとに職員室まで提出に行って、採点してもらって次に進むシステムだ。

間違ったら何回も解き直し。それを十二時までやって、解散。


そんな日が二日ほど続いて、二人きりになると、どちらからともなく話をするようになった。


ときどき涼みながら、順調に解いていく。


「暑い」

「暑いねー」

「解き終わった?」

「まだ。解き終わった?」

「解き終わった。提出して涼んでくる」

「え、速い! ずるい! 私も涼みたい!!」

「俺だって涼みたい」

「私は全然涼めないのにー」

「頑張れ」

「頑張れないー教えてー」

「……はいはい」


ずるいずるいと騒ぐ彼女に、結局根負けして教えるのが常だった。
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