十五の行方
「目盛りがないのに作図するのは無理だろ」

「気合いで……!」

「いや、俺の定規貸すからちゃんと測れよ……」


何で借りるって発想にならないんだよ。


十五センチを基準に九センチを測れるわけがない。


真っ直ぐに直線を引くのは教科書とか下敷きとかノートとかを使うにしても、やり直し必須である。


そして、それに俺が付き合わされるに決まっている。


「えっ、いいの? ありがとう!」

「……どういたしまして」


終始そんな調子だから、分からないとすぐ適当に埋める彼女に教えるのは、本当に本当に骨が折れた。


でも、少し楽しかったのは事実だ。


そう。


俺は、補講が、十五が好きな彼女と話すのが、楽しかったんだ。
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