溺愛までノンストップ〜社長の包囲網から逃げられません〜
ここには、疑問も文句もぶつけたい相手がいないので、店員を困らせる訳にもいかず言われるまま、1つ選ぶ事にした。
先ほど秘書室で会った女性達が着ていたような華やかな色合い、艶やかなスーツばかりに困惑する。
その中から、おとなしめのホワイトのスーツを選んだつもりだった。
だが、見ると着るとでは大きく違った。
肌触りが良く体にフィットし、それでいて肩が詰まるとかがなく、まるで自分の為に作られたような感覚。
だけど、今まで与えられ着ていた畏まった仕事着と違い、胸元が開いたブラウスに体のラインを強調するスーツに戸惑う。
きわめつけは、タイトスカートが思っていたよりも短く、横には大きく開いたスリットがなんだか恥ずかしくて脱ぎたくなり、ジャケットを脱ごうとするのに、店員が装飾品を選んできてしまう。
きわめつけは、ガーターベルトと太ももも丈のストッキングだった。
「そのスーツですとランガード部分が見えてしまいます。西園寺様がお待ちです。早く着替えてください」
カーテンの向こうから急かされるように、ひも状のガーターベルトとストッキングを渡される。
こんなのつけた事がない。
どうすればいいのと困惑していると、カーテンの向こうから見ていたかのように声がかかった。
「そのタイプなら下着を脱がなくても簡単に着られますよ。ひもだけを下着の下に通した後にストッキングを挟んでください」
あーなるほど…
それでも、着慣れない恥ずかしさに戸惑ってしまう。
モタモタしていると、カーテンの向こうが騒がしくなり、会話が聞こえてくる。
そこにあるスーツを全部とスーツに合わせた靴、装飾品、それになぜたが下着まで合わせて用意しろと言う声に聞き覚えがある。
ストッキングを履き、ガーターベルトに留めると乱れがないことを確認して、カーテンを開けると、聞き覚えのある声はやはりあの男で、店員数人に指図していた。
「…何してるの?」
「時間がない。行くぞ」
私の疑問に返答する気はないらしく、手を繋ぎ出て行こうとする。
「お買い上げ頂いた品は、マンションにお届けしておきます。ありがとうございます」
にこにこ顔の店員に見送られ車に乗り込んだ。
走り出した車の中、私は着替えさせられた疑問をぶつける。
「これはなに?私、値札もついていない服支払えるお金なんて持ってないわよ」