溺愛までノンストップ〜社長の包囲網から逃げられません〜
すると、横から手が伸びてきてドアマンの手から私の手を奪うようにさらうと、腕を曲げた隙間に手を絡めるように乗せていた。
「俺が、エスコートしてやる」
自分の手なのに、その腕から動けないのは男が脇を締め手を抜くのを妨害しているからだと思う事にした。
実際は、とてもスマートにエスコートしてくれているのに、先ほどから自分への扱いに戸惑っているからだ。
ホテルの大広間のドアを開ける前にチラッと見えた立て札には、企業連合会と書いてあった。
私なんかが居ていい場所じゃない気がする。
小声で男に話しかける。
「私、外で待ってた方がいいんじゃないかな?」
「なぜだ?連合会と言ってもただの飲み会だ。酒癖の悪い奴らもいるから側にいろ」
なら、連れて来なきゃいいのにとぼやきたかった。
入ってすぐに、顔見知りの男性に捕まった男は、私に見せる時とは違って愛想良く談笑しだす。
なんなの?
そんな顔もできるじゃん…
なんだか面白くなくて会場内を見回すことで気を紛らわせていたら、奥に見える並べられた料理が気になりだす。
早く、話が終わらないかなぁ…
ていうか、私ここにいる意味ある?
話に夢中になってる男の手からそっと手を抜いて、ゆっくりと距離をとる。
人に紛れてしまえばいいと安易な考えでいた。
お酒は流石にまずいだろうと炭酸水を飲んで、美味しそうな料理をお皿に並べていく。
すると、見ず知らずの人に声をかけられた。
「きみ、どこの会社関係者?君みたいなかわいい女の子見た事ないんだけど、誰と来たの?」
少しだけお酒の入った男性がグイグイと距離を近づけてくるので、離れようと一歩、二歩と後ろに下がった。
すると、背後にいた女性とぶつかってしまった勢いで私はお皿を床に落とし、炭酸水は真っ白なスーツを濡らしていた。
ぶつかった女性も服が汚れ不機嫌そう。
「申し訳ございません」
「あなたね…この服いくらすると思っているの?」
聞きたくない金額なんだろうな…
「うちの者が申し訳ありません。お洋服代は僕の方から出させていただきます」
聞き覚えのある声が背後からして、女性に名刺を渡していた。
「…まぁ、西園寺社長」
頬を染める女性を無視して私の手を掴む。
「麗美、離れるなと言っただろう。大丈夫か?何もされてないだろうな?服が濡れている…風邪をひいてしまう前に帰ろう」