溺愛までノンストップ〜社長の包囲網から逃げられません〜
「似合ってるから1人きりにさせたくなかったんだ」
体が密着するほど距離を縮めてきた男は、切なく甘い声色で囁くように耳元で呟いた。
背筋にゾグっと一直線に走るなんとも言えない疼きに、体が小刻みに揺れ止めようと自分を抱きしめた。
「体にフィットしたスーツを上から覗けば見える谷間、スリットから見えるこの腿に男がなんとも思わないはずがないだろう⁈」
甘い声色のまま話しながら、壁についた反対の男の指がスーツの合わせ目に沿ってかかると、壁についていた手が体のラインをなぞるように下りてスリットから手を入れ腿をなぞる。
ストッキング越しとはいえ、男の手が生々しく感じ嫌悪してもおかしくないのに、この先の展開にドキドキとしている。
「…やめて」
心とは間逆に拒絶する。
「…何を期待している。主人の言いつけを守らなかった奴隷に躾が必要だろう?」
一瞬だけ、肩を揺らした男。
躾?
それならば、恋人に触るように触れないでほしい。
そう思っていたら、顔を見つめてきて憎らし気に笑った男。
「どんな罰を与えようか?」
今回、迷惑をかけた私が悪いから言い返せない。
肩まである私の髪を一房掴み、遊ぶように指に絡めては解いていた。
「…言いつけに逆らったらお前からキスするって言うのはどうだ⁈もちろん、口答えもNGだ」
「そんなの…」
途中まで出かかった声を手のひらで押さえたが、遅かった。
「今、逆らったよな」
「逆らってない」
「ほら、口答えだ。罰は2回になったぞ」
憎らしほど、楽しそうに口元に笑みを浮かべる男を睨んだ。
ほら、しろよと顎で指図する。
キス…
キスだよね…
罰がどうしてキスになるのかわからない。
ドキドキしながら、少しだけ男の肩に手を乗せて唇に届くように背伸びをし、触れるだけのキスをした。
すぐに離れた事に不満顔の男。
「後、一回あるよな」
一回だけでもいっぱいいっぱいだったのに…
キスしないとこの状況から解放してもらえない雰囲気に、勇気を振り絞った。
一回も二回も変わらないんだから…
もう一度、背伸びをして男の唇に触れた瞬間、後頭部を押さえられ腰をガッチリと押さえ込まれると、触れた唇を割って入ってくる生々しい温もりにたじろぐが、ガッチリと押さえ込まれては逃げ場がなかった。
絡める舌、角度を変えて深くなるくちづけに、自分から信じられない声が漏れていた。