溺愛までノンストップ〜社長の包囲網から逃げられません〜
巧みなキスに思うままに唇を侵されボーとしだしたら、唇を甘噛みしては舌先で唇をなぞられる。
もう、抵抗する気も失せ男を見つめるだけしかできなかった。
「麗美…聖夜って呼べよ」
唇を啄むキスで催促される。
「せ い や」
ぎゅっと抱きしめられ、言われるまま名前を呼んだ。
「れみ…もう一度」
「聖夜」
チュッとおでこにキスを落とした男は、嬉しそうに微笑んだその笑顔に、キュンと鳴る。
初めて見る男の一面に、頬が熱くなっていた。
男が私の頬に手を伸ばした時、エレベーターが下の階へと動き出した。
そこで初めて、ここがエレベーターの中だった事を思い出した男は舌打ちして、私の唇を指先でなぞっていく。
「口紅が取れたな」
男の唇についたローズピンク色を、男が自分の指先で拭った。
だけど…
「まだついてる」
男はニヤっと笑い、顔を突き出してくる。
これは、取れって事でしょうか?
鞄からハンカチを出して唇の端についていた口紅を拭いてあげていたら、エレベーターが止まり開いたドアからカップルが乗ってきた。
何をしていたか想像できる場面に、カップルは頬を染めた後、視線を逸らして背を向けた。
そうですよね…
やっぱり、そう思いますよね。
見られた訳じゃないが、想像された事に恥ずかしくて男の胸を叩いた。
きっと真っ赤になっているであろう私を見て、楽しそうに笑った男は、カップルが見ていないのをいい事に
「俺を叩いた罰だ」
耳元で小さな声で囁くと、触れるだけのキスをしてきた。
羞恥で視線を彷徨わせると、ピカピカに磨かれたドアに写っていたらしく、カップルは微笑ましい物を見たようにはにかんでいた。
もう
もう
ありえない。
どこかに隠れてしまいたくて、男の背に隠れた。
その場から一歩も動けないように男の背広の裾を握ると、後ろ手に伸ばした男の手が、裾を握る手を掴んで指を絡めてきた。
まるで恋人みたいじゃない…
男の真意がわからなくて強張る体。
ドキドキする胸を押さえて、早く一階につけばいいのにと願う。
エレベーター内での時間が、とても長く感じ心身ともに疲れ果てた時、やっと一階にたどり着いたらしく、カップルが先に降りていった気配がした。
男の背後からドアの向こうを歩いて行くカップルの背を見つめた。