溺愛までノンストップ〜社長の包囲網から逃げられません〜
頭上から小馬鹿にした笑いが聞こえる。
「何を恥ずかしがっているんだ」
「鉄の心臓を持っているあなたとは違って繊細なんです」
「繊細ね…」
意味あり気に笑った男は歩き出した。
「あっ、今の口答えにならないわよね」
また、あんなキスを強要されるなんて心臓が持たないと、心配で男の顔を歩きながら覗く。
「どうだろうな?」
意地悪な答えに、男の袖を掴み頼みこむ。
「違うと言って…私の身が持たないわよ」
「どうしてだ?」
「もう、いじわる…」
「クッ、あははは…あんな程度で降参か?俺の本気はまだまだこれからだ。覚悟してろよ」
えっ。えー
繋いでいた手を離し距離を取ったら、振り返り戻ってきた男は離した手を掴み意味深に呟いた。
「逃がすかよ」
「あなたに返済分返さないといけないんだから、逃げないわよ」
悲しい表情をする男。
「逃げても、捕まえる」
「逃げないって言ってるのに」
「口答え三回だ」
これ以上、罰を増やしたくない私は口をやっと閉ざした。
「行くぞ」
苛立っている男は、乱暴に歩き出した。
既に待っていた車の後部座席に、私を押し込むとドサっと音を立てそっぽを向く男。
脅して、相手を黙らせるなんてお前は、子どもか⁈
毒吐きながら私も男とは反対側を向いて、薄暗くなった外を見ていた。
どれだけ時間が過ぎたのだろう?
車が止まりしばらくして、後部座席のドアが開いた。
「お疲れ様でした」
運転手の年配の男性がドアの向こうにいて、男は、私の手を掴み車から降りる。
「あぁ、お疲れ様。今日はもう帰っていいよ」
「はい、かしこまりました」
エントランスを過ぎコンシェルジュらしき人が出迎える前を通り過ぎ、エレベーターに乗る。
また、2人きりに身構えるが、沈黙が逆に辛かく、斜め後ろから男の肩を見つめるだけだった。
なんなの?
何が気にくわないのよ。
エレベーターが最上階に止まり、手を引っ張られて降りた先は、一部屋しかないエントランスだった。
贅沢な作りに驚く間もなく男にぎゅっときつく抱きしめられ、先ほどよりも荒々しいキスに翻弄されていく。
どうしてキスするのよ?
強引に口内を貪る男の舌、呼吸する事も許してもらえない激しいキスにクラクラとしだした頭部を撫でる男。
「返済なんて諦めて、俺のものになれよ」