溺愛までノンストップ〜社長の包囲網から逃げられません〜
溺愛から逃げられません
頬を撫でた指で顎を掴んだ男は唇を何度も食む、そのキスに攻略されそうになった時、玄関ドアが開いた。
「部屋まで待てないんですか?」
「うるさい。少しは気を利かせろ」
「気を利かせたから、タイミングを見計らって今お迎えに出たんですけどね」
今朝の主従関係を感じさせない男と緒方さんの会話に驚くと同時に、キスしていた事がバレている事に赤くなる。
やだ…
明日から緒方さんの顔を見れないよ。
「私的な事に私をこき使ったくせに、そんな口を聞きますか?明日からビシバシ働いてもらいますからね」
鋭い目つきに男はチッと舌打ちする。
ヒョエー、恐い。
「いつまでそうしているんですか?社長、桐谷さん、どうぞお入り下さい」
緒方さんが開けている玄関ドアの奥に手を差しだして部屋に入るよう促される。
抱きしめていた体を離すと、また手を繋ぎ玄関まで歩き、高そうな靴を無造作に脱ぐと、少し高い段差の上で私がヒールを脱ぐのを待っている。
脱ぎ終わると、手をひかれ奥へと歩いて行く。
長い廊下にいくつもあるドア。
「このドアはドレッシングルーム、その奥がバスルーム。あのドアはクローゼットルーム。中で繋がっている。こっちはトイレだ。それからその角のドアが寝室。真向かいのドアは麗美が好きなように使え」
「えっ?」
背後に立っていた緒方さんがそのドアを開ける。
「こちらに、ブティックで買われたスーツ、お家から運んできたお洋服をクローゼットにかけておきました。一緒に買われた装飾品は桐谷さんのジュエリーボックスに入れてあります。ヒールは、玄関横のシューズルームに入っています。ランジェリー等は、ダンボールに入ったままにしてありますから、後でご自分でお願いします」
何を言っているんだろう?
思考がついていかない頭で、引っかかった言葉を思い出す。
「私の家からって…私の荷物がどうしてここにあるの?」
緒方さんは社長を見つめ、呆れ顔。
「大事な事をお伝えしてないんですか?」
「言えば、拒絶するだろう」
「だからと言って、本人の意思を無視するとはあなたらしくない」
「どうやって荷物を持ってきたの?」
2人の会話に割り込む。
「今朝、社長からお家にご連絡が言っていましたので、私は、引越し業者と一緒に伺い手続きをさせて頂きました」