溺愛までノンストップ〜社長の包囲網から逃げられません〜
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「君のおじいさんがいなければ、祖父は第二次世界対戦の中国で死んでいたらしい。五体満足で帰還できたのはおじいさんのおかげだと言っていた。祖父がいなければ、西園寺家は跡継ぎが途絶え無くなっていた」
「だからって…」
「だからだ。まだ、恩返しができていないんだ。それなのに、君のお父さんは律儀に残りのお金を毎年欠かさず返してきた。そこで祖父は考えたんだ。麗美を我が社に入社させる事で少しでも恩返しができると。だが、それだけじゃ祖父の気が済まなかった。親戚になってしまえば3000万円の返済を拒否できるんじゃないかと考えた祖父は、いずれ俺とお前の橋渡しをするつもりでいたんだ。だが、その前に祖父は倒れた」
「親戚って…あなたと私を結婚させるって事よね」
「あぁ、そうだ。俺は祖父から入院先でその話を聞かされ、祖父の意思を尊重するべきか悩みながら会社でのお前をずっと見ていた」
「尊重って、私の気持ちは尊重されないの?好きでもない相手とあなたは結婚できるの?」
「いつかは、会社の為に誰かと結婚しなければならなかった。なら、俺が自ら選んだ女がいい」
そう言いながら、頬に添えてきた手は微かに震えていた。
「最初は、俺のタイプの女が受付にいた事に気がつかなった事に後悔したよ。まぁ、社内の女は面倒な事になるから眼中になかったってだけなんだが…女なんて、その場だけでよかった俺が、毎日見るお前の笑顔に魅かれた」
男の甘みを含んだ話の内容にドキドキしだす。
「だから、桐谷さんにお前との結婚の申し込みをした。3000万円の返済の代わりに祖父が麗美と俺の結婚を望んでいた事も話した。すると、お前の意思を無視して結婚させられないと家を売って返済する事にしたらしい」
「そんな話、聞いてない」
「言えば、お前はどうした?親の為に好きでもない俺と結婚しただろう⁈社長の俺の頬を叩くぐらいだからな」
ニヤッと意地悪く笑い、今朝の一部始終を思い出させた男に可能性はないとは言えない。
「早とちりじゃないわ」
「話合おうとせずに一方的に叩いた後、俺を睨むお前に惚れたんだ。つまらない人形のようなYESマンな女なんていらない。必ず、お前を俺の女にすると思うまで、そう時間はかからなかったよ。自分でも驚くぐらい、俺にこんな独占欲があるって教えたのはお前だ」