溺愛までノンストップ〜社長の包囲網から逃げられません〜
勢いで社長の奴隷になります
突然、僕から俺に一人称が変わり、言葉遣いも社長らしからぬぞんざいな口ぶりに変わった。
そんな男にこちらも目上の人に対する言葉遣いを忘れ、大きな声をあげる。
「どういう事よ?」
「お前の親は俺に金を返さなくてもいい。その代わりに…お前が俺に3000万円分を労働で返していくんだ。お前の給料じゃ、今から3000万円なんて大金を返していけないだろう⁈公衆の面前で恥をかいた慰謝料分としてお前が親の代わりに俺に尽くす事で全部チャラにしてやるって心優しい俺様が言ってるんだよ」
めちゃくちゃな内容だ…
わざとらしく、目の前で叩いた頬をさすり
「大会社の社長を大勢の前で叩いて、恥をかかせたんだぞ。3000万なんて安いぐらいだと思うが?」
それを言われると何も言い返せない。
だが、簡単に引きさがれる筈がない。
自分の人生がかかっているのだ。
死ぬまで奴隷なんて、絶対イヤだ…
だからといって、父や母が悲しむ姿なんて見たくない。私が、条件を呑めば、あの家に家族が住んでいられるなら…
「わかったわ。ただし、あなたの奴隷になる条件として、1ヶ月分の給料分と同じ金額があなたに尽くす1ヶ月分の労働代よ」
頭の中で、簡単に計算する。
給料から生活費等差し引いて無駄遣いさえしなければ、手元に50,000円が残る。給料20万弱分の労働代と合わせて25万円…1年で300万円…うまくいけば10年で返せるはず…
「そうきたか⁈いいだろう…その条件でのんでやる。まぁ、ずっと俺の側に居れば返す必要もないんだがなぁ」
意味深に笑った男
「お前がそうくるなら、こちらも短期決戦で行くから覚悟しろよ」
10年後は、35歳か…
大丈夫…それからでも遅くはないわ。
恋愛をして、結婚して、子供を産みたい。
今の時代、晩婚化しているもの…大丈夫。素敵な人に巡り会えるわ。
心で自分に言い聞かせていたつもりが、口に出していたとは気がつかず私は、大きく頷いていた。
男が妖しく笑い、何かを企んでいるなんて思わないまま、男をきつく見つめる。
「後で緒方を行かせる。それまで通常業務をしていろ」
緒方さん?
誰だと疑問を持ってる間に、男は立ち上がり、テーブル向こうから手を伸ばした指先が私の顎をクイっと持ち上げた。
「いい子で待ってろよ…麗美」