溺愛までノンストップ〜社長の包囲網から逃げられません〜
社長は奴隷を甘やかす
1人残された部屋で、やっと緊張感が取れたのか、大きなため息を吐いてデスクに腰を預けた。
「なんなの?社長秘書のサポートって罰にもなってないじゃない。ドラマとかなら普通、資料室行きとかじゃないの?」
ミスをした人間が、首を免れた代わりに資料室行きとかをテレビで見た時の光景を思い出して1人呟く。
でも、1人きりの部屋の中では、誰も答えてくれない苛立ちに、ヒールを履いた足で何度も地団駄を踏んで怒りをぶつけた。
なに?
仕事中も側に置いて、こき使うつもりなの⁈
約束は、奴隷になるって話しかしていない事に気がついた。
私のバカ…
ツメが甘いんだから…
あの男が帰ってきたら、ちゃんと決まりを作ってもらわなくっちゃ!
とりあえず、緒方さんに言われた仕事を片付けようと、デスクの上にある山の書類をファイルに閉じなければと頬をパンパンと叩いて気合いを入れた。
クリップに閉じられている書類事に付箋紙が貼り付けてあり、綺麗な字で各ファイルにある名が記されている。
なんなの?
ただ、この付箋に書いてあるファイルに閉じればいいなら直ぐに終わりそうだ。
至れり尽くせりの状況に困惑する。
各資料事に付箋紙に閉じるファイル名を書く時間があれば、緒方さんならすぐに終わる仕事なのではないか⁈
脳内で疑問という疑惑が過っていく。
山のように積んであった書類もなくなり、アッと言う間に頼まれた仕事は終了してしまう。
貼り付けてあった付箋紙をぐちゃぐちゃに丸め、少し離れたゴミ箱に投げると、見事にゴミ箱の中に入り大きくガッツポーズをしたら男の声と拍手がした。
「ナイス、シュート」
声のする方に顔を向けると、社長であるあの男が手首に手土産風の紙袋を下げ手を叩いていた。
咄嗟の事に頭を抱え、しゃがみこみデスクの影に隠れ1人事を呟く。
「えっ、えっ…どうしているの?会食でいないんじゃなかったの?」
「あぁ、会食はキャンセルして来た。緒方に知られたら怒るから言うなよ」
いつの間かデスクの向こうから、こちら側に回り込んでいた男が返事を返しながら私の腕を掴むと、優しく立たせながら悪戯が成功した子供のように笑った。
「言うなよって、私が言わなくてもバレるんじゃ…」
男の人差し指が抗議する唇を押さえて止めた。
「口止め料欲しくないのか?」