不埒な専務はおねだーりん
病院から車を走らせること約30分。車窓を眺めていると社宅まであっという間に到着してしまった。
「送って頂いてありがとうございました」
「これくらいお安い御用さ」
篤典さんはわざわざ車から降りて、社宅の敷地内まで私を送り届けてくれたのだった。
「明日も迎えにくるよ。何時がいい?」
サラリとさりげなく言うものだから、うっかり聞き逃すところだった。
迎えにくるって……。明らかな依怙贔屓だ。
「ダ、ダメですよ!!」
「同じ場所に出社するんだからいいだろう?」
「いくらなんでも専務は私に甘すぎですよ!!」
そうかな?とか言っちゃって、うやむやにしようったってそうはいきませんからね!!
「妹みたいなものだからって、普通秘書と一緒に通勤なんてしませんからね!?」
「かずさのこと……妹だなんて思ったことないけど?」
……妹でなければ何だというのか。
(まさか本当にペットと同じ扱い?)
むうっと拗ねるように口を尖らせて篤典さんを見上げれば、ぷっと噴き出して笑われてしまう。