不埒な専務はおねだーりん
「最初に難易度の高い要求を拒絶させることによって、そのあとの小さな要求を承諾させるビジネステクニックのひとつなんだけど……心当たりはない?」
「あ……ありまくりです!!」
浜井さんから説明を聞いた途端、わなわなと唇が震えた。脳裏に浮かぶのはこれまで要請されたおねだりの数々だ。
(ああ!!思い当たる節がありすぎる!!)
……そうだ。
篤典さんのおねだりはどれもこれも最初は無理難題を押し付けるが、最終的には私でもすんなり受け入れられるレベルに落としてくれる。
それが、すべて策略だとしたら……?
(だからあんなに恥ずかしいことばかり要求するのね!!!)
本気なのが冗談なのか判断が難しい、篤典さんの要求の数々にようやく合点がいく。
「いい?かずさちゃん!!合言葉は“お兄ちゃんに言いつけてやる!!”だからね?男の人に甘い顔ばかりしてるとすぐつけ上がるんだから……。たまには懲らしめてあげなくっちゃね?」
浜井さんは心なしか何かを期待するように、私の両手をガシリと握ったのだった。
「はい……」
お兄ちゃんに言いつけるって……小学生?
それで引き下がると思われている篤典さんもどうかと思うけど……。