不埒な専務はおねだーりん

(愚かなのは私の方だ……)

手が届かない人だと、好きになってはいけない人だと分かっているのに、惹かれてしまうのを止められない。

近くにいればいるほど眩しくて、目を背けたいのに背けない。

たとえ身の破滅が待っていようとも、少しでも側にいようと焦がれてしまう。

だからこそ、あえて近づかなかったのかもしれない。

認めてしまったら……あとはもう共に転がり落ちるしかない。

「かずさ……。僕の気持ちは20年前からまったく変わっていないよ」

篤典さんはうっとりとした目つきで私の頬を撫で、顔にかかった髪を払った。

「目を瞑ってくれるかい?」

「……はい、篤典さん」

「イイ子だ……」

言われた通り目を瞑って待っていると、篤典さんのセクシーな唇に襲われる。

子供のキスではない。情熱的な大人のキスだ。

生まれて初めての巧みな舌使いにドキドキする。

「遼平には内緒だよ。かずさに手を出したことがバレたら……殺されかねない」

「……はい」

キスに夢中になりすっかり骨抜きにされた私はバタンキュウっと篤典さんに身を預けて生返事をしたのだった。

ところで……浜井さんも篤典さんもうちのお兄ちゃんのことをなんだと思っているのかしら?

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