不埒な専務はおねだーりん
(キス……しちゃった……)
それも、間違いなく自分の意思で。
篤典さんのキスの感触を思い出しては人知れず唇を撫でる。
優しい優しいと思っていたけれど、それにもちゃんと理由があって。
穏やかに包み込むように私のことを見守っていてくれていたんだと思うと何かこう……たまらない気持ちになっちゃって……。
早まったことをしてしまったという気持ちと、篤典さんに愛されているという喜びで胸がいっぱいになってしまう。
……初恋は実らないものだと思っていた。
じゃあ実った初恋のその先はどうなるのか。
ひっそりと見ていられればそれで満足だったはずなのに、彼のキスを知ってしまった今ではもう……。
(こんなの誰にも相談できないよ……)
おねだりとはまた違った意味で悩ましい。
秘密の重さにため息ばかりが口をついていくのだった。