不埒な専務はおねだーりん

……一度気になり出すと止まらない質なのはお兄ちゃんに似てしまったのか。

「コーヒーを淹れてきました」

「ありがとう」

私はコーヒーを隠れ蓑にして執務室に入室することに無事成功した。

カップをデスクに置いて専務の顔色を窺えばどことなく表情が澱んでいて暗い。やはり疲れているみたいだ。

「何か……あったんですか?」

「……かずさには敵わないな」

わずかな沈黙の後、篤典さん観念したように胸の内をさらけ出してくれた。

「昨日、本社の爺様達に少し……ね。小言を言われたよ。いつまでこのビルで遊んでいるつもりなのかと。遊んでいるつもりは全くもってないんだけどね~」

篤典さんはデスクに頬杖をついて、ふうっと大きなため息をついた。

「プロジェクションマッピングも、子供向けのアートイベントも彼らには理解できない異物らしい」

本社の重鎮方は宇田川タワーヒルズの顔としてメディアにも頻繁に登場する篤典さんのやり方を認めるつもりはさらさらないらしい。

実際に篤典さんが支配人になってからの方が、タワーヒルズ全体の業績は上がったというのに、良い側面よりも悪い側面を取り上げて難癖つけるのがお好きなようだ。

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