不埒な専務はおねだーりん
「オフィスの外でかずさをじっくり愛でたいな」
一瞬の流し目に仄かな色気を漂わせ、篤典さんは両手を組み合わせその上に顎をのせると私の返事を待った。
愛でたいって……。
(もしかして……もしかしなくともそういう意味!?)
裸になってベッドに横たわるところを想像するだけで、うっかり鼻血が出てしまいそう。
友達以上恋人未満の関係を行ったり来たりしている私達は、まだキス止まり。
篤典さんはいい加減その先に進みたいと、自ら申し出てくれているのだ。
(顔が熱い……)
嬉しくて飛び跳ねたい気持ちを一生懸命我慢して、平静を装うがその効果はいかほどのものか。
私だって少なからず同じ気持ちでいたのだから、それが表に出ないはずがないのだ。
……今すぐにでもキスして私を奪って欲しい。
しかし、嬉しい気持ちが胸に広がっていく一方で、不安の芽がムクムクと成長しているのも確かに感じていた。