不埒な専務はおねだーりん

「かずさがいなかったら、僕はもっと傲慢な人間になっていたかもしれないな」

篤典さんが宝箱を自慢するように楽しそうに想い出を語ってくれるなら、真相は永遠に心の中にしまっておこう。

どちらかというとクッキーそのものよりも、クッキーを食べるその人に興味が湧いてしまったんだけど……。

「君のすべてが愛おしいよ」

「篤典……さん……」

感極まった篤典さんが小さなキスをたくさん顔に振らせる。

心地良さよりもくすぐったさの方が優り、んっと悶えれば、篤典さんは悲痛な叫びを上げた。

「ああ!!そんな可愛い顔で見ないでくれ!!自分で立てた誓いなのに破りたくなる……」

「もう……なに言ってるんですか……」

オフィスで散々イチャコラを迫ってきたくせに、今更紳士面するなんてひどい人!!

……でも、仕方ない。

私が好きになったのはそういう人なのだ。

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